TENNEN

Roots of tennen

新内外綿に学ぶ、日本の紡績 PART3

資源を活かす「反毛」という糸づくり

紡績会社「新内外綿株式会社」の協力のもと、過去2回にわたり糸づくりを取り上げてきました。第3回となる今回は、tennenの中核素材であるリサイクルコットン「BORO」シリーズの糸づくりがテーマです。前回は紡績全体の工程をたどりましたが、今回はその一歩手前にさかのぼり、原料準備の段階で行うリサイクル技術「反毛」に焦点を当てます。

ナイガイテキスタイルは、異なる組成の素材や回収衣料まで幅広い原料を反毛で活かす技術にも長けています。本稿では、その工場の工程をたどりながら、反毛とは何か、繊維がどのような手順で生まれ変わるのかを、現場の様子も交えてわかりやすくお伝えします。

►新内外綿に学ぶ、日本の紡績 PART1|新内外綿に学ぶ、日本の紡績

►新内外綿に学ぶ、日本の紡績 PART2|繊維から糸へ。紡績の現場を追う

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「服を捨てない」がキーワード。

tennenのBOROプロジェクトとは?

tennenのBOROとは、着古されたコットン製品を回収→選別→粉砕・開繊してわた状に戻し、バージンコットンと混紡して糸にするサステナブルな取り組みです。

繊維リサイクルには大きく、①マテリアルリサイクル(素材のまま再資源化)、②ケミカルリサイクル(化学的に分解して再生)、③サーマルリサイクル(焼却して熱回収)の三種があります。私たちが採用しているのは①のマテリアルリサイクルです。

不要になった繊維製品を、専門の機械でほぐして「わた」状に戻す技術のことを、「反毛(はんもう)」といいますが、一般的に使われる落ちわたや残反といった製造工程由来(プレコンシューマー)ではなく、BOROでは実際に使用された後の製品(ポストコンシューマー)が主な対象。より環境負荷の低減に資する選択肢を追求しながら、もう一度“服に戻せる”品質の糸づくりを実装しています。

ポストコンシューマーの「服を捨てない」という髄の部分にフォーカスして、不要になったコットン製品を集め、コットン以外の部分を丁寧に取り除き、再び糸にしている点は、一般的に言われる反毛とは異なっています。

私たちtennenのBOROプロジェクトは、反毛糸の中のリサイクル比率が高く、生地全体の反毛糸率が高いのが最大の特徴なのです。

具体的には、回収された製品から綿100%のものを選別し、タグや縫製糸、付属部材を丁寧に取り除いたうえで反毛します。得られた反毛わたをバージンのオーガニックコットンと適切な比率でブレンドして紡績し、糸に仕立てます。こうして生まれた糸を用い、Tシャツ、スウェット、手拭いなどのBORO製品としてこれまでに展開してきました。

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反毛の要である開繊の流れ

今回は、日頃お世話になっている新内外綿の製造拠点・ナイガイテキスタイルの反毛現場を見学しました。

取材時に動いていたのは他社のロットでしたが、不要になった衣料品が再び繊維として使える状態になるまでの一連の流れを、簡単に共有できればと思います。

こちらが、生地を破砕して繊維に戻す反毛機の全体像です。写真奥の投入口に、あらかじめ細かく裁断した布を投入し、機内での開繊・除塵を経て、写真手前からわた状の繊維として排出されます。

破砕ローラーを連結した一体機のため、一台で工程が完結。従来機に比べて繊維くずのロスが減り、処理の効率も向上しているとのことです。

こちらは、取材当日に反毛にかけられていた古着です。こうした繊維原料となる布地は、依頼主側で手配され、事前に大まかに裁断されています。

細かく裁断した古着を投入口に入れると、機内の吸引で取り込まれ、ダクトを通って機械本体へ送られます。

機械の中には、ノコギリの刃のような無数の針が植えられたドラムが回転していて、生地をひきちぎりながら、ほぐしていきます。

破砕工程は4連のドラムで構成されており、あとの段階に進むほど針が細かくなります。その過程で生地はさらにほぐされ、均一で細かなわた状に加工されます。

こうしてわた状になった繊維は、いったん袋詰めして保管し、その後、所定の配合に向けて調合工程へ送られます。

こちらが、反毛作業を終えたわたです。こちらは色選別をしておらず、化学繊維と天然繊維も無選別のまま混在しているため、仕上がりは全体にグレーがかったトーンになります。元の原料の種類はもちろん、生地の組織や糸番手によっても、できあがるわたの性状は変わります。

※tennenの場合は、捨てられた白いコットン製品から選別したものから反毛わたを作っています。

また、部分的に糸のまま残るところもありますが、これをすべて取り除こうとして強く開繊しすぎると、繊維が短くなりすぎて後工程の紡績で扱いにくく、強度も低下してしまいます。どこまで開くかの見極めが重要だそうです。

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反毛の需要は高まっている?

私たちtennenは、BOROプロジェクトとしてコットン衣料の反毛に5年以上取り組んできましたが、反毛の現場を訪ねたのは今回が初めてです。実際の工程を見て理解を深めたうえで、現在の需要や課題について、ナイガイテキスタイル・工務課長の松本貴敬さんにお話を伺いました。

ーーー新内外綿での反毛の取り組みについて教えてください。

まず私たちを含むシキボウグループ全体のサステナブルな取り組みとして、反毛混綿糸「彩生(さいせい)」を展開しています。廃棄衣類や端材をもう一度繊維から繊維へと循環させ、新たな価値を持つ生地へ「彩り豊かに再生する」という理念のもとで開発を進めていました。

その中で新内外綿と子会社のナイガイテキスタイルが、反毛から再紡績の工程を担当しています。多品種小ロットに対応しつつ、長年培ってきた杢糸の調合技術(色設計・混率コントロール)を活かして、反毛原料特有のばらつきを吸収。狙いどおりの色・表情・品質を高いレベルで実現しています。

ーーーやはり紡績で培った技術が反毛には必要不可欠なのですね。

特に私たちは、杢糸づくりで培った調合技術をそのまま反毛繊維にも応用できる点は大きいですね。反毛機を含む前紡工程の設備・品質管理を自社で整え、開繊から紡績まで一元管理することで、リサイクル原料特有のばらつきを吸収できるのも強みだと思います。

また、従来は少ロット向け機を改造して対応していましたが、新しい反毛機の導入以降は再生繊維への取り組みを本格化。処理能力が上がり、扱える量も増えました。しかし、需要面では2020年前後に関心の高まりがありましたが、一過性の側面もあったのかもしれません。しかし現状は、日本では反毛の引き合いはまだ多くなく、量産に結びつく案件は限られているのが実情です。

ーーー反毛に回ってくる素材としてはどのようなものが多いのでしょうか。

お受けする8割ぐらいはプレコンシューマー(製造工程由来)に分類されるもので、服を生産する際に発生する生地の裁断クズや落ちわた。残りの2割程度はポストコンシューマー(使用後製品由来)のもので、Tシャツとかタオルなど、実使用後の製品です。基本的に弊社では素材の選定や仕分け作業はしていないので、お客さん側でご用意いただいたものを反毛するという形になっています。

その場合問題となってくるのは、繊維長の短化です。反毛はどうしても繊維が短くなり、強度やケバに影響が出ます。再紡績する際は、バージン素材などとの最適なバランスを取れるよう、ブレンド、番手、撚りなどの条件を変えることで、ファッション用途に耐える糸品質まで引き上げています。

ーーーtennenのBOROは、横浜で古着を回収・リサイクルする事業を展開している「ナカノ株式会社」さんにお願いし、使い古されたコットン製品を回収。化学繊維が使われていると思わしきタグや縫い糸部分を除去しているのですが、それでもやはり品質管理が一筋縄ではいきませんでした。

分別や収集にコストも手間もかかるため、tennenのように、天然素材だけを集めて反毛し、また衣料品を作るということはまれなことです。合成繊維だけとか、それかクルマの内張材などに使うような、繊維であればなんでも良いものも多い中で大変。弊社としても、他の繊維と混ざらないように、単一素材や単一色で開繊するときは、一度機械の中を掃除するなど、やはり手間はかかってしまいますね。

ーーー反毛わたは繊維長が短く強度が出にくいとのことですが、BOROの糸はどのように設計していますか?

反毛わただけでは糸強度が不足しがちなので、バージンコットンと約1:1の割合でブレンドして強度と均斉を確保しています。現実問題として、開繊で短くなった繊維はそのままだと粗く切れやすい糸になってしまうため、ある程度繊維長のある新綿を混ぜるのが前提です。

工程面では、カード機の設定を落とし過ぎないなど、落ち綿が過大にならないように条件を細かく調整します。結果として糸は太番手寄りの設計になりやすく、Tシャツなどのニットに仕立てると、ほどよいヴィンテージ感とコシのある風合いに仕上がるのがBOROの持ち味だと思います。

ーーーエコな素材を追求するのには、大変なことも多いのですね。

そうですね。特に品質以外の面では、開繊作業の安全管理がいちばん神経を使います。機械の内部では金属針が高速回転していますので、もし金属片が混入すると火花が出て、綿ほこりに引火して一瞬で燃える危険があります。実際、他社で反毛中に発火して火災に至った事例も耳にしています。そのため、当社では反毛のセクションは常にスタッフを置いて監視し、ほかの紡績工程と別棟にして運用しているほど、実は気を遣っているんです。

安全を最優先に、循環素材を“服に戻せる品質”で作り続けるための体制づくりを徹底していきたいですね。

ーーー大変な想いまでして、反毛をする、その意義について教えてください。

いちばんの理由は、資源と廃棄の課題に“実務で”応えるためです。裁断くずや残反を反毛して、紡績でもう一度糸に戻す。私たちにはそれを実際のサプライチェーンに乗せて運用できる力がありますし、グループ内で連携すれば、取り組みの規模も確実に広げられます。

グループとしては、音楽イベントでTシャツを回収して、翌年開催される同イベントのオフィシャルTに再生するような例もできてきましたが、このように関わる人が増えるほど回収量は安定し、循環の輪は強く大きくなる。tennenさんのようなブランドが増えることも、その後押しになります。

だから私たちにとって反毛とは事業のオプションではなく「やるべきこと」のひとつ。手間がかかっても、安全と品質を両立させながら、着実に続けていきたいと思っています。

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コットンの生産には、多くの労力や広大な農地、そして水・エネルギーが必要です。私たちはその使用量を少しでも減らしながら、気持ちよく長く着られるアイテムを届けたい。tennenは今後もBOROプロジェクトを推進し、ファッションの現場から具体的なサステナブルアクションを発信できればと考えております。

本取材にご協力くださった新内外綿株式会社、株式会社ナイガイテキスタイルの皆さまに、心より御礼申し上げます。今後とも tennen をよろしくお願いいたします。

【協力】
新内外綿株式会社
株式会社ナイガイテキスタイル
https://www.shinnaigai-tex.co.jp/

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